大阪2児餓死事件 回顧録

 

2010年、若い母親が幼児2名を放置し、餓死させるという惨たらしい事件があった。
あの凄惨な事件から10年以上が経ち、人々の記憶から段々と薄れていくのは仕方のないことかもしれない。しかし、これほどの “負の集合体” のような事件はなかなか忘れられないものである。少しばかり感傷的になるのは季節のせいだろうか。

今の現地の様子が気になり行ってみることにした。

セレクトショップが立ち並ぶお洒落な通りを歩くと、マンションは事件当時と同じようにむっくりと立っていた。いくつか洗濯物を干している部屋も見える。

事件があった部屋のポストにはチラシがおしくらまんじゅうのように詰まっていた。入居者は居ないのだろう。チラシは誰かに見つけてほしそうに、青い印刷面を薄暗い蛍光灯に向かってはみ出させている。

ぽつりぽつりとマンションから人が出てくる。出てくる人たちは心なしかどんよりしているようにも見えた。秋の陽気のせいか、場所がそうさせるのかは分からない。

マンションエントランス横には真新しい缶ジュースが置かれていた。風化させずに事件のことを思い続ける人もいるのだろう。このちっぽけな缶ジュースがあの時あの場所にあの部屋にあったら、2人はもう少し長く生きられたのだろうか。どうしようもないことを考えても仕方がないのだが、考えずにはいられない。

大阪2児餓死事件大阪2児餓死事件

近くの公園では親子連れが楽しそうに遊んでいた。親子の笑顔が眩しく輝く。
木枯らしが頬に当たった。冷たい季節になってきたのだ。
2枚の枯れ葉がふわりと空に舞い上がっていくのを、私は見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

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